国際ロータリー第2580地区 東京武蔵野中央ロータリークラブ 今週の卓話

「武術空手の魅力」(2014/05/08)

「武術空手の魅力」
東京大学名誉教授 大坪 英臣さん
(紹介 石引宏一会員)



【スポーツと武術】
空手というと突いたり蹴ったりする激しい格闘技だと考える人がほとんどだと思います。それは世の中で見ることができる空手がそうなので仕方がないことです。ルールの中で最適化されたスポーツとしての空手が世の中で敷衍しています。スポーツはパワー・スピード・タイミングが重要な要素です。すべての道場は筋力・スピードを主体とする格闘技スポーツとしての空手を教えているといっても過言ではありません。筋力主体の格闘技スポーツは相手との衝突をもたらします。筋力の強い者や運動神経の優れた者が勝つことになります。そのために、年齢別、性別、体重別でクラスを分け、同一クラスの者同士が戦います。つまり、身体能力があまり差のない者同士が競い合うのです。スポーツ格闘技は相互の攻撃と守備と繰り返しとなり、観客はハラハラドキドキ興奮するわけです。武術は本来生死をかけた中に発達したもので一発勝負であります。例えば剣の戦いにおいて、竹刀剣道や時代劇のようなチャンチャンバラバラの切り合いは本来なく、一瞬で勝敗が決します。 空手も突きと蹴りを相手と交互に出し合うようなド突き合いはスポーツとしての衝突であり、武術本来のやり取りではありません。筋力を使わないとすると、では何を使うのか? 見えない部分を使うことは間違いありません。今回の卓話は、武術としての伝統空手の持っている奥深さに少しでも触れていただくことを目的としています。

【古伝の型】
古伝の武術空手においては空手=型といってよいほど型の習得を最重視します。スポーツ空手でも型を覚えますが、組手実戦には型は役に立たないとして、昇級審査のときに課題として要求させられるのでその場しのぎで覚える程度です。あるいは、体操競技のように見せるための型を習得する流派もあります。その美しさに感動される方も多いと思いますが、実際の武術としての威力はなく、体操や舞踊としての美しさを求めていると思います。武術空手の型はその型のどの部分でも相手を倒せる力を持っています。型の習熟度が上がって来ますと、身体に気を通すことが出来るようになります。 その結果、心身が非常に強靭に変化していき、相手に「入る」ことが出来て「無力化」し触れるだけで相手を倒すことが出来るようになります。また、相手を倒せなければ型はできていないことになります。三戦(サンチン)とナイファンチが最重要な型です。最初のうちは型として外面的に正しい形になるように努力します。外面が出来て来ますと内面の使い方に意識がいきます。上級者はほとんど内面の動きしか意識していません。

【相手に「入る」と「無力化」】
武術全般に言えることですが、内面の働きで「入る」ことができれば、相手を「無力化」し、制圧できます。「無力化」とは身体が固まった状態となり、自分の意志で身体を操作できない状態です。ここに若干の問題が生じます。観ている者にとって武術はやらせに見えることです。無力化した相手は力を加えずに倒れるので、わざと倒れるようにしか見えないのです。 そのために、一般の人には、受け手がやらせで倒れるエセ武術と本物の武術の見分けが難しくなります。

【「入る」とはその瞬間を押さえる】
宮本武蔵の教えに「枕を押さえる」という言葉があります。相手がまだ動作に移っていないがまさに攻撃しようとするその瞬間に、「押さえる」のです。これを相手に「入る」とも言うのです。相手の身体が動き始めてからの反応では遅すぎます。「入る」を理解する参考としてベンジャミン リベットの研究があります。無意識が行動を起こす準備を始めてから0.5秒後に脳は行動を起こそうとしたと認識します。脳が攻撃行動を始めようとする認識する前に、その行動を止めるような刺激を与えると、脳はパニック状態になることを利用したのが「入る」と考えることができます。問題は相手の無意識が事を起こそうとしていることをどう見極めるかということです。武術ではこれを「見る」でなく、「観る」といいます。

【「気」】
「攻撃する動き(ウゴキ)のウの頭を押さえること。 気にても、太刀にても、身にても押えよ」と武蔵は教えています。実際に出来るようになってきますと、「気」で押さえるという言葉がしっくりきます。ただし、格闘技であるからと言って、相手を威圧するような「気」のようなものではなく、相手を受け入れ相手と調和・融合する「気」で、むしろ相手に対する「感謝・尊敬・愛」といったものです。これで相手を倒すのですから出来るまでは信じられませんでした。筋力を使わないので、年齢や体力に対しての制限はありません。私の道場では、82歳の方や女性も熱心に楽しく稽古されています。衝突のない調和が主体ですので投げる側も投げられる側も「笑い」が絶えません。



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