国際ロータリー第2580地区 東京武蔵野中央ロータリークラブ 今週の卓話

「希少種を守る地域協働の取組~小笠原ネコプロジェクト」(2018/2/1)

「希少種を守る地域協働の取組~小笠原ネコプロジェクト」(2018/2/1)
東京都獣医師会理事 中川清志さん(紹介 田邊軌夫会員)

小笠原の島々は今まで一度も大陸と繋がったことがない海洋島です。このような島には、植物も動物も、風か波に運ばれるか、羽があれば飛んでくるかしかたどり着く方法はありません。そのため、小笠原の生き物は独自の環境で進化し、世界でもここでしか見られない生き物(固有種)が多く存在します。その生態系は非常に偏っており人が連れて行ったネコが島で野生化することで島独自の生態系が崩れる危険が生じました。

 公益社団法人東京都獣医師会(以下、本会)は、会員及び賛助会員企業の協力を受け、環境省、林野庁、東京都、小笠原村、小笠原村教育委員会、NPO小笠原自然文化研究所(iBO)及び小笠原海運株式会社と協働し、野生化したネコ(ノネコ)を減らす努力をしてきました。ネコを減らす為には2本の柱があります。1本目は「島外搬出」、2本目は「蛇口閉め」です。 「島外搬出」は山域で捕獲したノネコを本土に運んで新しい飼い主さんに繋ぐ事業です。会員病院が協力し、600頭余のネコをお迎えしています。(今年のバレンタイン・デーに600頭目が海を渡りました!) 「蛇口締め」は,新しいノネコを生み出さないための事業です。小笠原村のネコの飼い主さんに、島に適した飼い方をして頂く必要があります。村では,「小笠原村飼いネコ適正飼養条例」(平成10年)を制定し、1.村への届出義務、2.個体識別(村予算でのマイクロチップ挿入)、3.不妊化に努めること、及び4.飼い主の会へ加入し適正飼養に努めること、が定められています。小笠原は森が深く、自然が豊かに見え、島の生活に憧れる人たちが移住します。飼育動物もなるべく「自然」に飼いたいと思う方も多いようです。その「自然」という考え方が、「マイクロチップは入れない」、「不妊化はしない」、そして「自由に外出させる」という考え方の場合もあります。小笠原の生態系は非常に脆弱です。ネコが管理されず、無秩序に増え、そして自由に闊歩すると、残念ながら絶滅の危機に瀕する生き物が出てきます。行政の方や生態系学者の方々が、猫の飼育者さんに、「絶滅しそうな動物を守るために、あなたのネコを小笠原のルールで飼って下さい」とお願いしてもなかなか受け入れてもらえないことがあります。その時、小動物臨床獣医師がネコを診察し、飼い主さんのご信頼を得て、その上で小笠原では何故ネコを飼う為のルールが必要なのかをお話しし、行政と飼い主さんの仲を取り持つと飼い主さんが自発的に小笠原に適したネコの飼養をして頂ける可能性が高くなります。


 ’08
169年間にわたり、本会では年11週間の小笠原動物派遣診療を実施することで診察を通じ多くのネコの飼い主さんとお話をし、信頼関係を築き、行政との仲を取り持って来ました。これらの活動の結果、小笠原諸島に生息し、推定生息数40羽といわれた国の特別天然記念物、絶滅危惧種IA「アカガシラカラスバト」は10倍以上の600羽ほどに増加し、そして有人島では世界で唯一だったネコにより壊滅させられた「カツオドリ」の営巣地は復活しました。

 「人が生活する以。ネコの適正飼養を続け、この成果を守り続けるには弛まぬ努力が必要です。そのためには現地に拠点病院と獣医師が必要だと本会は訴え、行政は理解して下さいました。環境省、林野庁、東京都、小笠原村及びiBOのご尽力で「小笠原世界遺産センター 動物対処室」が設置され、本会勤務会員の獣医師が駐在を希望して下さり、現地淺沼博文先生の長年のご尽力、及び本会派遣診療が9年間実施してきた業務を引き継ぐことになりました。

 動物対処室には基本的な検査機器が揃い、一次病院の機能がありま。診察を通じネコの適正飼養や新たな外来種を作り出さない努力を村民が自主的にできるよう、ご理解を得る事が最大の目的です。

 「人とペットと野生動物が共生できる島」という小笠原村の目標はこれから本土でも重要な課題となると考えられます。また、寺社仏閣や文化財などの例を挙げるまでもなく、遺産を維持し続けるには継続的な努力が必要です。

 小笠原で行われている、自然遺産に於いて人と伴侶動物、そして希少野生動物が共生し続ける環境を守る事業は、我が国以外では見られず、世界に誇る活動です。今後とも多くの方々のご賛同・ご協力を頂ければ幸いです。

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